23日の土曜日に、高校野球大会を見に行った。もちろん、まだ甲子園ではない。神宮球場での地区予選、東東京都大会の準々々決勝だ。女子高出身の私は、高校野球を直に見たことがない。職場でトイメンに座るP氏が母校の応援に行くというので、連れて行ってもらうことにした。「きっと、この回で消えちゃうと思うんですよねぇ。相手が強いですから」。その相手というのが、なんと我が豚弟の出身校である。豚弟は可愛くないので、ここはP氏の母校を応援してやろう。
試合開始予定は午後2時だという。2時と言ったら1日で一番陽射しが強い時間帯ではありませんか。顔から首から腕、指先に至るまで、念には念を入れて日やけ止めクリームを幾重にも塗る。そして、つば広帽子をかぶり長袖のジャケットを持って約束の外苑前駅へ。
さて、球場に入ったとたんに、流れて来た応援のブラスバンドに驚いた。曲が♪まつけんサンバ なのだ。そして、次には♪暴れん坊将軍の主題曲。♪狙い撃ちこそ、途中から流れたが、高校野球と言えばよく耳にしたコンバット・マーチを、ついぞ聞くことはなかった。正に歌は世につれなのだ。
声援もベンチに入れない部員達が、よほど練習したのだろう。振り付けまでつき、お揃いのメガホンに満面の笑みで「大きな声でGO・GO・GO!!」と、応援を促すものや「お前が打たなきゃ誰が打つ?!」と、半分脅し?のようなもの、プロ野球選手並みに、選手それぞれに対するものまで賑やかだ。そんな中で、はっきり聞き取れたのが「イケ・イケ・イケメンコウスケ、かっ飛ばせ!!」というもの。残念ながら、バックネットのスクリーンには「球場内禁煙」の文字だけで、選手の顔は映しだされない。今回はイケメン・コウスケのご尊顔を拝見することはできなかったが、甲子園に出場してイケメンぶりを見せてもらいたいものだ。このイケメン・コウスケの後に出てくるのが、タモリの「空耳アワー」ではないけれど、どうしても「ケツデカ」としか聞こえない選手への声援。「イケ・イケ・ケツデカ」。何度聞いてもそうとしか聞こえないのだ。こちらも、揃って甲子園まで進んでもらえれば、その真偽を確認することができるのだが。
23日は心配していたほど気温も上がらなかった上に風もあり、爽やかな屋外球場観戦日和になった。やっぱり普段の行いの良い私のこと(天候まで味方してくれたわ)と思った矢先に、来ましたよグラッと。4時35分、7回の表。最初はユラリ。「なんか揺れたみたい?」程度。ところが、その直後にドドンと言う感じで球場全体が突き上げられるような衝撃。仰ぎ見ると、照明塔がグラリグラリと大きく揺れ続けている。円錐形の照明1つ1つが、明るい日差しを受けて輝いている様に、不謹慎ではあるが綺麗だなぁと見とれてしまった。試合も一時中断。母校が押され気味だったP氏は相手の投手が、この中断でピッチングを乱してくれることを期待したが、これを期により鋭いピッチングになっていったのだった。そして、結局7×3で豚弟の母校が圧勝。P氏が予想した通りにP氏の後輩達の夏は終わってしまった。
初めて球場で見た高校野球は、守備につくにも戻るにも全力疾走。バッターボックスに立つにも脱帽していがぐり頭を見せての礼、実に爽やかだった。選手だけでなく、控えの応援担当君達もキビキビと動き、最後にはエールの交換で幕を閉じた。どれだけ拍手をしたか分からない。さて、気分よく外苑前駅で解散・・・の、はずだったのだが。地下の改札周辺はごった返し、地上に向かう階段も携帯電話をしている人々に埋め尽くされていた。そう、地震のせいで地下鉄が動かないのだ。優秀なニッポンの鉄道網である。1時間も前に発生した地震なのだから、もう数分すれば「点検が終わりました」と言って動き出すだろうと、私はその時点で高をくくっていた。球場内で飲み物も食べ物も思う存分摂ってしまったし、混んでいるのが予測されるので店に入るのも遠慮したい。では、「一駅散歩がてら歩きましょう、着く頃には動き出してるでしょう」ということで、青山一丁目までチンタラと歩いて行った。しかし、状況は外苑前駅と全く同じ。ならばJRと、今度はJR信濃町駅を目指す。甘かった。JRも宇都宮線や高崎線は動いているものの都内中心を走っている線は全線「運転を見合わせています」だって。地下鉄の銀座線だけ動き出したというアナウンスで青山一丁目まで逆戻り。ここで、反対方向のP氏とは心細いながらも解散。途中で地下鉄が止まってしまう恐れがあるので乗車前にトイレ、トイレと探したら、こんな時ってそんなもんよね「工事中につき、改札を出て仮設トイレにお回り下さい」だって。ごった返す改札を出るのもなんだし、ここは運にまかせてガマン。渋谷まで駅3ツです。どうか止まりませんように。ところが、動くとアナウンスのあった線に乗客が殺到して、ドアがなかなか閉まらない。やっとこ動き出し終点渋谷に無事到着。ところが、JRはまだ動かない。では、時間を潰すのも兼ねて駅ビルのトイレへ行きましょう。半端じゃない列です。中には浴衣姿の若者もチラホラ。お祭りにでも行った帰りの災難でしょう。
7時1分に渋谷駅銀座線の改札を出て、やっとJR山の手線が動き出したのは7時半、地震からほぼ3時間が経過していた。それでも、やっとこギュウギュウ詰めの電車に乗って渋谷から3つ目の我が最寄駅へと帰って来ることができた。
お目当ての高校の試合を見ていたのが2時間半、そして通常片道10分乗車の所を3時間近くかけて帰って来た計算になる。「本当に本当にご苦労さまでしたワタシ」と、マンションに辿り着いた自分に言う。
しかぁし、ウソでしょ?! エレベーターに張り紙です。「地震のため、エレベーターが停止しております」。エレベーターよ、お前もか。15階までの長い道のりはまだまだつづく。
朝食・トーストとミルク。昼食・トーストとミルク。夕食・トーストとミルク。これが365日続いても私は全く気にならない。朝はこれにヨーグルト、夜は納豆をつけますよ。昼は、そうねぇチョコレートかな。以前、こんな話になった時、ツアコン絵美ちゃんと、このHPの管理人であり編集者である某氏が「バカなんじゃない?!」と私の顔を見ながら言った。そこに、京おんなの美里さんが「友達を疑ってはいけない、姫宮はバカなのだ!!」と、結論づけてくれた。以来、食事の話になると「姫宮バカ説」は定説となって語られている。
しかし、そんな姫宮のマンションにも、3口のガスコンロをもつイッチョマエのキッチンがある。しかも使われないから新品同様に美しい。ここで腕をふるうのは家主ではなく、たずねてくるお客様方。絵美ちゃんであり、リカコであり、植田ということになる。
絵美ちゃんは、リカコが大好きなV6坂本くんのご実家であるところの八百屋さん、亀戸の坂本商店で購入した野菜を抱えてやって来て、チャッチャと何皿もの料理を並べてくれる。この坂本商店には亀戸天神にお参りに行くという口実のもと、リカコに連れて行かれたことがある。坂本くんのお母さんと私の従姉妹の名前が同じということで、リカコに羨ましがられている。錦糸町に住まいし絵美ちゃんも、坂本商店に近いって羨ましがられているのだっけ。そんなリカコも、買ってはみたものの、手も足も出ないパソコンのメンテナンスを頼んだ時、わざわざ足を運んでくれた上に、トマトと牛肉と卵のスープ、櫃まぶし、春雨のサラダを、まるで自分の家のキッチンでのように、手馴れた様子で作ってくれた。私が「美味しい、美味しい」と食べていたら、ちゃんとレシピまで書いてくれた。もちろんレシピを見ても私が作らないことくらいリカコは百も承知。誰かに作ってもらいなさいという優しい気遣い(?)だ。植田に至っては、退社時間に突然電話が鳴り、「東京駅のホームで待ってるわ」。言われるままにホームに向かうと、右手にワイン、左手に食材を抱えた植田が立っている。「どこ行くの?」と問う私に「たまには貴女に、まっとうな食事をさせようと思って」って。
ウチのキッチンは主より客人の方が物の在り処まで心得ている。「料理しないのに、パエリヤ鍋まで有るのよ」とか「包丁もまな板も行平鍋も、生意気にも木屋のなのよ」「わさびを摺ろうとしたらサメ肌のオロシがねまで持ってるのよ」なんて客人同志でやっている。そう言えば、そんなのも持っていたっけ。普段は、お湯を沸かすだけのキッチンが、皆様方のお陰で活気付く。有り難や、有り難や。
中でも、皆が喜ぶシェフはP氏だ。P氏は下町の元祖カギッ子の一人っ子。小学生の頃から、一人で惣菜やさんをのぞいたりしながら、自分で創意工夫した様々な料理を作っていたらしい。だからその腕を、日ごろ一生懸命に働いてくれているスタッフさんに是非とも披露したかったらしい。しかし、住まいが成田に程近い場所とあっては、なかなかそこまでご足労願うのは厳しいものがある。そこで、客が勝手に使うキッチンの話を耳にし、これだと思ったらしくおずおずと、お伺いを立ててきた。私もご相伴に預かれるなら文句は無い。喜色満面P氏の奮闘が始まる。会社の帰りなのでスーツ姿のまま、アタッシュケースとスーパーのカゴを同時に持っての食材選び。キッチンでは鍋、フライパン等の道具や食器、調味料の点検。「色々揃ってるじゃないですかぁ」って、これまた皆さんと同じ反応は褒められたのか責められたのか。
洗面所で何やらゴソゴソやっていたと思ったら、Tシャツに短めの前掛け、そしてバンダナと、やる気満々の姿で現れた。そんなP氏だから、手際の良いことあざやかなこと。「あのぉ、何かお手伝いできることが有りましたら」と、家主は聞いてみるのだが「テレビでもご覧になっていて下さい」。素直な家主は奮闘しているP氏のことも忘れテレビに夢中。おっといけない、せめてテーブル・セッティングでも。こんな時に役立つのがダイソーで買った105円也の和紙製ランチョンマットだ。花や紅葉が透かし模様のように入っていてなかなかお洒落。いよいよ、今日の主役であるスタッフさん2人も到着。なぜか植田もいるんだよね。私はランチョン・マットを敷いただけなのに、3人は華やいだ気分に喜んでくれている。それに会社の姿と一変したP氏の新鮮な姿にも大はしゃぎだ。いよいよ、お食事。お運びくらいはやりますよ。まずはお通しに、とろけるチーズを乗せて焼いたはんぺん。そして烏賊と大根の煮付け。長芋、おくら、納豆といったねばねば系に刺身用の烏賊とイクラをのせた海鮮やまかけ。それからバジリコスパゲッティ醤油味、プレーンオムレツ、グラタン・・・もう、文句のつけようがない。そして何より素晴らしいのはこのシェフ、女性4人が「美味しい、美味しい」と食べている横でニコニコしながらビールを飲み、そのうち満足したようにウツラウツラと居眠りを始めたこと。
こうなりゃ女性4人はP氏に感謝しながらも、静かにお休みいただいている横で思う存分お喋りに興じられるというもの。食事の用意はしてくれる。お喋りには口出ししない。もちろん、味も良い。これこそ理想のシェフ像ですね。
「ねぇねぇ、今度何を作ってもらう?」何も知らず、満足気に居眠りをしているP氏の横で女共の会議は踊る。腕に自信のある方、いつでも“マンションのキッチン貸します”。
女性専用車両が話題だが女性の敵、痴漢という輩は電車の中にだけ生息しているわけではない。
女優、桜井幸子似で友達の間でも美人の誉れ高いかおりちゃんは、出版社に勤めるOLさん。ワインのラベル集めが趣味という酒豪だ。その晩も仕事の後に「とりあえずビール」から始まって何本目かのワインのボトルを空けた時には帰る地下鉄が無くなっていた。やっと捕まえたタクシーに揺られ、日付けが変わってからのご帰還。マンションの手前のなかなか変わらない信号に「ここで下ります」なんて、敬礼をしながら上機嫌でタクシーを降りたのだが、千鳥足はなかなか前へと進まない。わずかな道のりを倍もの時間をかけてやっとこ自宅マンションに到着。マンションは、オート・ロックではあるけれど、郵便受けの並ぶホールまでは誰でも入れる。そこに、とんでもない男が潜んでいた。どうやら、信号でタクシーから降りるかおりちゃんを目撃し後をつけながら、見当をつけて先回りをしたらしい。そして、郵便受けを覗こうとしたかおりちゃんに、後ろから抱きついてきた。「ギャー!!」。自分でも驚くくらいの野太い声が出た。相手はオカマさんかと思ったのかすっ飛んで逃げたと、その時のことをかおりちゃんは振り返る。お酒の勢いもあって、即110番通報。「へんな男にマンションのロビーで抱きつかれましたぁ。早く捕まえてぇ」。この時の声は、ちゃんと女性。真夜中のマンション前に白黒ツートンカラーの車体が程なく現れた。いくらなんでも、これからホシを追うのは無理。様子を説明して下さいということで、かおりちゃんはパトロールカーに乗せられて最寄の警察へ。
かおりちゃん、初めての事情聴取です。一通り説明が終わると、刑事が「では、調書を作りますので…」。ペンの走る音が、かおりちゃんには子守唄に聞こえたのか、その場でアルコール臭を発しながら居眠り、いや熟睡してしまった。さすがに鉄格子の入った取調室ではなかったが、警察で熟睡する女性には刑事さんも、さぞかし驚いたことだろう。「あのぉ、調書を作ってみたんですが内容を確認していただけますか」。申し訳なさそうに揺り起こされた時、かおりちゃんが眠りについてたっぷりと3時間はたっていたという。調書に拇印を押して又もやパトカーでマンションまで送り届けていただいた。そしてその翌日、正確には当日には警察直々の要請により、かおりちゃんの住むマンションにはアッチにもコッチにも防犯カメラが設置されたのだった。
後日談もある。いつものようにアルコールをきこし召してのご帰宅をしたかおりちゃん、鍵を失くしてしまっていることに気づいて真っ青。実家は佐渡だし、夜中だし…。そこで思い至ったのが「そうだこういう時こそ庶民の味方の警察だぁ」。さすがに110番は気が引けるので、先日ゆっくり眠らせてくれたあの優しい刑事さんにおすがりしよう。袖振りあうも他生の縁。カクカクシカジカと今の状況を訴えると、アッという間に「困った時のお助け鍵やさん」のような人を派遣してくれた。「税金分働いてもらったって感じ」と、かおりちゃんは澄ましておっしゃるのだった。やっぱり美人は得?!
さて、ヒロイン変わり今日子ちゃんが痴漢を未然に防いだ話。今日子ちゃんはいつも元気に、足音高く歩く。お住まいは高島平にあるマンションの4階。エレベーターなど使わない。美容と健康のため、階段を踏みしめて腿を高く上げて登る。その日も仕事の疲れなど感じさせない足取りで階段をカンカンと登って行った。すると2階から3階にさしかかる所で凄い勢いで駆け下りてくる青年とぶつかりそうになった。俯いてはいるものの上背もあり、なかなか端正な顔立ちが見てとれた。そのまま、登って行くと3階の踊り場に朝晩、挨拶くらいはする高校生の女の子が涙ぐんで立ち尽くしていた。今日子ちゃんは考えた(ははぁん、別れ話ね。あの青年はこの子に別れを告げて去って行ったのね。嫌いになったわけじゃない、きっとこのまま行ったら、この子を不幸にしてしまう悲しい事情があったのね)。今日子ちゃんが、その女の子に「大丈夫?」と声をかけると、女の子は小さな声で「はい。ありがとうございました」と言って自分の部屋へと向かった。(悲しい別れを必死に耐えて、私にお礼をいうなんてなんて健気)などと思いながら京子ちゃんは4階への階段を登ったのだった。
自室に帰り、着替えて一休みしているとピンポーン。のぞき窓から見てみると、先ほどの女の子が母親と立っている。「先ほどは、娘の危ない所を救っていただきましてありがとうございました。ちゃんと警察にも届けましたので、事情を聞きにこちらにも警察官が来るかも知れません。その際は宜しくお願いします」。どうやら、京子ちゃんが目撃したのは若い恋人同士の別れの一幕ではなく、女高生にいたずらしようとした男性が京子ちゃんの階段を登る大きな足音に驚いて逃げて行ったところだったのだ。暫くして刑事登場。「逃げる犯人とすれ違ったようですが覚えていますか? 体型は? 顔立ちは?」。今日子ちゃん、おずおずながらも答えました「カッコ良かったです。ハンサムでした」
期間限定で再結成していた、あのピンクレディーも歌っています。♪男は狼なのよ気をつけなさい〜 でも、今日子ちゃんは鼻息荒くおっしゃるのだった。「でも、あのハンサムな痴漢、私には目もくれずに走り去ったわね。失礼だと思わない?!」
けいこです。エクセルが使えません。Xのマークを見ると、季節はずれのクリスマスかと思ってしまうとです。って今人気のピン芸人、ヒロシになってしまった。
職場にワード・プロセッサーなるものが導入された時も、後輩達がブラインド・タッチとか言って、キーも見ないで文章をバリバリ入力しているのを横目に、五月雨のようにポトリ・ポトリと一文字一文字探しては打っていたものだった。その時も(ああ、こんなものが出来る前にトットト、結婚して専業主婦に納まっていれば、こんな苦労はせなんだものを)と、わが身を呪った。そして今度はパーソナル・コンピューターだ。ワードは、ワープロを泣きながら覚えたおかげでどうにか使えるし、ミミズがのたうちまわっているような悪筆の私にはありがたい存在だ。メールも同様の理由で私には強い味方になっている。ところがエクセルとなるとさぁ大変。ただでさえ数字は一桁の暗算だってあやしいのだから、数式なんて考えただけで蕁麻疹が出そうだ。関数なんてなんのことやら。数なんて言っていながら「今日の日付」を設定するのも関数なんだそうだ。蕁麻疹から帯状疱疹にまで症状が進んでしまいそうだ。
ところが、今時のOLさんたちは「女性は機械に弱い」なんて言葉は死語になったかと思うくらいに進化している。絵美ちゃんもリカコも、いとも簡単に表でもグラフでも作ってみせる。リカコなんて派遣会社での試験を、お試し程度に受けてみたら、エクセルで満点を取ったというから半端じゃない。それに二人は共通して教え方も上手い。私のような、純粋培養のアナログ人間にでも理解できるように噛み砕き、時には図まで使って教えてくれる。しかし、自分が分かっていれば全世界の皆々さまが分かっているはずと思んでいるお姉さん方もかなりいる。
困ったことに、今の私の仕事の前任者がそういう類のお姉さんなのだ。元々、システム関連の職場に長くいた人なので、パソコンを使いこなせない人なんて、全くもって彼女の頭の中には存在しない。だから、エクセルが分からないと言ったら「また、冗談言ってる」くらいにしか思わないらしい。思い切って「ここの部分が、どうやったらいいのか分からないんだけど」と、かなり具体的に言ってみたのだが「大丈夫ですよぉ、こんなの簡単ですよぉ」って。「ここが○△ですから、この○△を☆にしてぇ」。ウーム、とうとう☆まで出てきてしまったかぁ。
こりゃ根本的な部分で相容れないと納得し、絵美ちゃんにSOS。すると絵美ちゃん、答えて曰く「なんだって、そんなに難しくするのですかねぇ。もっと単純に作り直しちゃった方が後々、仕事し易いですよ」。「居るんですよねぇ。ちょっと使えると、やたら面倒な数式とかを入れたがる人が」。やっぱり、本当にできる人は違う。やっと我が意を得たりで、ホッと一安心。仕事は誰が代わっても分かりやすくできる方法が一番よね。ということでエクセルは初歩の初歩の私が使いこなせる段階までレベル・ダウン。そして、せっかくのチャンスであったのかもしれないが、私の進化はこの期に及んでもピタッと止まってしまうのだった。
先日、久しぶりに同級生と会った。よく旅行した仲間で、私を加えての3人組だ。1人は専業主婦、もう1人は市役所に勤務しながらの奥さん、そしてノーテンキの独り者と、三者三様。ひととおり、お互いの近況などを報告しあった後で、私が例のエクセルの話を持ち出すと、市役所が「まったく同じよ」と身を乗り出して来た。「私の前任者もパソコンおたくのような人で、書いちゃった方がよっぽど早い数字でも全部パソコン。何聞いても、そこに入ってますからでさぁ」。そこに入ってるものをうまく引っ張り出して使えりゃぁ誰も聞きゃしないと、市役所もイラつく毎日だったらしい。お互いに「分かる、分かる」と、シッカと手を握り合ったものだ。「で、どうしたの?」とたずねると「家にパソコン買ったわよ。でも勉強しようとしたけど無理。もう諦めたわ」。「私達の頭ではもう覚えられやしないわよ」。そして、彼女が取った行動は。「餌付けよぉ」。
パソコンが使いこなせて親切な“坊や”を探し出し、昼食で釣るのだそうな。「元々、パソコン好きなんだから、毎日のように美味しい昼食をご馳走すれば、喜んで私ができる所までフォーマットを作り直してくれるわよ」。凄い。逞しい。お見事。そうか、そういう手があったのねぇ。進化が難しくなった年頃のOL(OLDに非ず)は“生活の知恵”と多少の現金を上手に発揮しなくてはいけない所に来ているのだった。
進化ねぇ。起立する風太君やら、歩くデールちゃんやらとレッサーパンダがアチコチで人気だが、その辺の可愛い進化に、何事も留めておいてほしいものである。ご存知かな、最近永久歯が生えない子供が増えているんだそうな。これも人間様の進化なのかもしれないが、果たしていかがなものでしょう。
雨の降る日は天気が悪い。悪いはずだよ雨が降る。
ついてない日というのはあるものだ。雨の降った水曜日、駅に向かいながら「アッ、携帯忘れた」と気づいた。もちろん、この場合の携帯は携帯電話だ。今は携帯=電話よね。
気づいても天守閣まで取りに戻る時間は無い。(こういう日に限って何か入りそう)とは思うものの、とりあえずは出社です。今日はホームの人影もまばらだと思っていたら電車も空いていて、最初の駅から座ることができた。こんな日もあるんだなぁ、なんて小さな幸せを感じたとたん、目の前にどこから見ても立派なおばあさん登場。選りにもよって私の前に立たなくても。若く見えているでしょうが、私も意外と年齢いってるんですけどぉ。軽いとはいえ椎間板ヘルニアですし、頚椎も5番と6番が少々ずれてると、つい先日のレントゲンで判明したばかりなんですけどぉ、と言いたい気持ちをおさえてシブシブ席を譲る。ここで譲らなかったら人非人の誹りを受けかねない。「すみませんねぇ」とは言ってくれたものの、立派なおばあさんはちょっともすまなそうな素振りではない。「当たり前よぉ、いい若い者が座っているんじゃない」と、その目が言っている。この場合の“いい若い者”とは、決してgoodという意味ではないけれど。
空いていた車内も一駅ごとに混み合ってくる。乗客が濡れた傘をもてあまし気味になっている時にカーブの揺れで、すぐ横に立っていたOLの傘が思いっきり私のパンツにくっついてきた。パンツと言っても下着ではないですよ。ズボンよズボン。今はスラックスともズボンとも言わないの。発音はpaとnとtuが平坦で、お腹やおならと同じ。そのパンツに、擬音で表すならベッチャーあるいはグッチョーという感じでずぶ濡れの傘が。悲しくなる状況です。OLさんも、目の前に座っているおばあさんよりは、はるかに心をこめて謝ってくれてはいるけれど、この“濡れ衣を着た”気持ちというものは、いやはや何と表せばよいのやら。その上、いくつかの乗り換え駅に着く度に、横の席は変わるのに目の前のおばあさんだけは結局、私が降りる駅まで降りてはくれなかった。あのまま座っていれば傘を押し付けられることも無かっただろうに。
出社してからも、ついてない日はついてない。1日のメインイベントであるランチ時も、雨ゆえ食券を買うにも自販機の前は長い列。陳列されているおかずを見て、今日は“豚肉の竜田揚げ・きのこあんかけ”と“まぐろのヌタ”と心に決めた。しかし、これまた長い列に並んだ先の配膳で渡されたのは“まぐろの照り焼き”と“まぐろのヌタ”だった。ああ私としたことが、食券のAとBを押し間違えていたのだ。空いている時なら「間違えましたぁ」と言えば、配膳のお姉さんもにこやかに取り替えてくれるけど、これだけ並んでいると殺気と梅雨時の湿気がムンムン。言えない言えない、今日は言えない。泣く泣く、まぐろづくしのランチを食べることになる。ああ、お腹はすっかり豚肉モードになってたのに。
午後は、ひたすらおとなしく時間が過ぎるのを待つことにする。こんな日は慣れないことをやってはいけない。電話を取ったってろくな電話であるはずがない。でも、鳴ってる電話は出なくばなるまい。だれも取らなきゃ取らねばなるまい。「お待たせ致しました」と、言うが早いかドデカイ声が叫んでいる。「携帯にいっくらかけても繋がらないじゃないのよぉ」。母だぁ。やっぱりろくな電話ではなかった。「おまえの、保険が切れるらしいのよ。山口さんから煩く電話があってさぁ」。山口さんとは、母の昔からの知り合いである保険のおばさんだ。「これから先、どのくらい勤めてられんのか、積み立てられんのか……」。そ、そんな話、職場にかけてこないで下さい。年とともに耳が遠くなっている母の声は会社中に響き渡っているのではないかと思うくらいに大きく、答えにも窮する。ああ、やっぱり携帯を忘れた日に限ってこうなるのよねぇ。もう今日は、定時になったら♪七つの子のように、お家にとっとと帰りましょう。帰ったら、録画しておいたドラマを見ながら、今日の悪しき日が過ぎてくれるのを待ちましょう。
ところがどうよ、ビデオを再生してみたら現れたのは高尚なオペラ。どうやら4chのつもりで、お隣の3chを指定していたらしい。何万もする舞台を嬉々として見に、いや観賞に行かれる方々と、悲しいかな私は違う。オペラのオの字も分かりはしない。せめて民放の番組に間違えていたのなら愉快に笑って見られたろうに。それでも、いつもなら何本かテレビ番組を録画したものがあるはずなのだが、どうやらそれも昨日の時点で見終わっているらしい。こんな夜はお風呂に入って、さっさと寝るぞと湯船の蓋を取って唖然。湯船の栓が緩んでいたらしく、お湯が殆ど残っていない。CMのオダギリジョーじゃないけれど「どうすんのよワタシ」。湯船にお湯を張りなおす気力も残っていない。今夜はシャワーでおしまい。
もうったらもう、なんだったのだ今日という日は。寝てしまえば、いまいましい今日は終わる。ふとんをかぶって思いっきりベッドに倒れこんだ。ご想像下さい、イヤというほどベッドのヘッドボードに頭をぶっつけたこのワタシを。ついてないったらついてない! もう寝る!!