何が嫌いって、煩いのとメンドクサイのが大嫌いだ。どうでも良いことをガタガタ言う、肝っ玉のちいさな上司も嫌だし、アタマの天辺から声をだして「ヒメミヤさ〜〜ン」とスリ寄って来る後輩のヨーコちゃんも苦手だ。サッサと手書きすりゃ早いメモもいちいちパソコンで打ち出してコピーして配布するようなことも面倒だし、役場の窓口よろしく(お役所さんスミマセン)部署Aと部署Cで直接話せばいいことを、部署Bが「こちらで伺って両部署の折り合う所に着地するよう計ります」なんて、口を出してくるのもシチメンドクサイ。とは言っても、私にとって煩わしくメンドクサイのは何と言っても、化粧とブラジャーだ。(なら、それだけサッサと言え、だらだらとメンドクサイ)。
入社早々は、腰まで伸ばした黒髪を三つ編みにし、ノーメークで埼玉の片田舎から通勤していたものだ。見かねたに母に「東京のド真ん中まで通ってるんだからね、近所の魚屋にサンマ買いに行ってるんじゃないんだからね」(魚屋さんゴメンナサイ)と、口紅を持って追い掛け回され、泣く泣くメンドクサイ化粧を始めた。そうそう、同期の人達と思い出話になった時「新人研修の合宿で、顔を洗っても顔が変わらなかったのは姫宮だけだったね」なんて言われたっけ。
化粧というのは不思議なもので、慣れないうちはとっても厚化粧になってしまう。売っている物は何でもつけなきゃいけないような気がして、頬紅、ノーズ・シャドー、アイライナー、アイシャドー、マスカラetc. 今では殆ど使わないものも塗りたくっていた。頬紅をつければオテモヤンになってしまうし、ノーズ・シャドーを使ったひにゃぁ、正面から見れば鼻筋の通った高く見える鼻も、横から見たら鼻梁が茶色く汚れた感じだ。アイライナーもクレオパトラもかくやというくらい濃く太くなって目張り寿司でも食べたようなビックリお目目になってしまうし、マスカラをつけてクシャミをすれば、下瞼が真っ黒になって狸がアカンベしたみたい。(残念ながら、狸があかんべをした所は見たことないが)
初めてブルーのアイシャドーを塗って出社した日には部長に目顔で呼ばれた。何事かとデスクまで行くと「誰かに殴られたの?」と真顔で尋ねられた。友達のモミちゃんは、後ろ足首にアクセントのリボンがついたストッキングで颯爽と出社したつもりが「靴擦れ? バンド・エイドが剥がれそうだよ」と言われたとか。
ここで、年月を経て、化粧熟練者(?)となった化粧嫌いの私が、毎日どんな風に化けているかをご披露しよう。朝は洗面器に水を張ってバシャバシャと顔を洗う。洗顔後につけるのはシーブリーズ。白地にブルーのヨットの絵がついた爽やかモードだ。母が「臭い」と鼻をつまんでも、フェイシャル・マッサージをしてくれたエステティシャンのミヨちゃんに「もっと潤いを保つ化粧水を使って下さい」とアドバイスされても、好きなんだから仕方ない。あのスーとした感触が“清潔さ”を醸しだしている気がする。ちょっと傷があって沁みようものなら(消毒・消毒)と、うれしくなってしまう。シーブリーズの後は下地クリームを兼ねた日焼け止めクリーム。そしてダイソーで買った税込み105円也のファンデーションを塗って、同じく105円のオシロイをパフで叩きつける。これで土台はおしまい。
眉を描く。髪は、多くて太くて真っ黒なのに眉毛はミクロゲン・パスタを購入しようかと悩むほど薄い。なので、マユズミを引く。毎日、引くのはメンドウなので、刺青でもしちゃおうかと思ってはみるものの痛いのは嫌いだから無理。眉毛が薄いとポヤ〜ンとした寝惚け顔になってしまい、毎日せっせと描くっきゃない。口紅をさす。つけないと血色が悪く見えるのでこれも必須。こちらも先日、大井町の丸井内のダイソーで、グロスも含めて4色で105円也を購入したばかり。鏡と紅筆までついたオーバルの容器に、丸い仕切りがある可愛い口紅セットで、毎日楽しんでいる。どう考えても105円は安い。絶対に安い。
帰宅しての化粧落しは、入浴時に石鹸でゴシゴシ洗うだけ。クレンジング・クリームで丁寧に落すなんてことはしない。石鹸も、化粧石鹸やムース式などの、お洒落なものではなく、浴用の固形石鹸だ。これも好きなんだから仕方ない。顔と体を洗う石鹸を別にするなんてメンドウなことはしない。単に石鹸、浴用石鹸。さすがに洗濯石鹸は使わないけれど、ゴシゴシ洗って、最後に真冬でも水でバシャバシャすすぐ。湯上りは当然ながらシーブリーズである。う〜ん、清潔ぅ。
こんななので、かかる時間は化粧に10分あれば余裕だし、落すのには5分てとこかな。
さて、もう一方のブラジャーだが、子供の頃の姪や近所の坊主と一緒に入浴した時「なんで女なのにおっぱいがないの?」との鋭い質問が出たり「チャーちゃん(私)は絶対におっぱい小さいよぉ」と、ギネス並みの認証を得たりしている身としては、もともとが必要なものでは無いのだ。けれどもやはり、そこはほら夢見る乙女(?)。ランジェリー・コーナーでは顔見知りの店員さんに勧められるままに、それはそれはお花畑のようなブラジャーをショーツとセットで購入する最上級の客なのだ。なんで、そんな買い方をするかと言うと、Aサイズのデッパリも無いと諦めていた私の微乳を「お客様はBですよ」って、薦めてくれた店員さんがいたのだ。ブラをするようになってこの方、AAサイズのを見られて、アッちゃんに笑われたことはあっても「あなたはBです!」と言ってもらったのは初めてだった。そりゃ、かなり厚めのパットは入っているがBを購入と思うだけで嬉しいったらありゃしない。
けれども、やっぱり必要としない物は邪魔よねぇ。暑さに負けて一歩も外出しない日は、ノーブラのランニングシャツに短パンで、日がな部屋でブラブラしている。先日は、火災報知機の検査で、係員が来訪。仕方なく、それなりの格好でお出迎えしだが、チェックが済んでお帰りになるのが早いか「アチチ、アヂヂ」と即、開放。ホッとくつろごうとしたトタンにチャイムが鳴った。「スミマセン、確認し忘れた箇所がありました」。チョッ、チョッと待って下さい。やおら投げ捨てたブラをつけて服を着て…。
私って、お・や・じ?!
いえいえ、これでも一歩外に出ればナイスバディーの薄化粧、ハンサム・ウーマンでございますのよ。