2006-06-18 日
信じる者は救われる?
健康おたくの蒲田さんに連れられて“十字式健康普及会”という所に行って来た。
脳生理学(何のことやら?)に基づいて開発した施術なんだそうだ。言わば念力のようなもので、背中の曲がりや歪み、骨盤のズレをチェックし「シュッ、シュッ、シュッ」と念を送ること約1分で、背骨を真っすぐに本来の状態に戻すんだとか。背筋が真っ直ぐになれば、抱えている持病も痛みも癒えるということらしい。
「凄い!!」というより「んなアホなぁ」という思いの方が私の頭をよぎった。しかし、誘いに来た蒲田さんは大真面目だ。たった1回で「鉄板を背負っていたような背中の重みから開放されたのよぉ」と、歌うように仰る。前から、生まれながらに股関節の悪い私を色々気遣ってくれていたが、先日、社員食堂で会った時、暮れより痛みが出てきたという話をしたものだから、これは是が非でもと思ったらしい。「んなアホなぁ」という思いは飲み込んで、ここは人様の好意を有り難く受け入れることに致しましょう。
場所は品川、二人にとっては帰り道にあたり好都合。「蒲田さん、場所大丈夫?覚えてる?」と聞いてみると「大丈夫、真っ直ぐだから間違いようがありません」。でもねぇ、貴女には前科があるのですよ。
1度遊びに来たことのある私のマンションに、先輩を伴って訪れた時のことだ。それこそ私のトコも「大丈夫、真っ直ぐだから間違いようがありません」のはずなのに、待てど暮らせどやって来ない。約束の時間は1時間も経過している。どうやら、初めて訪ねて来た先輩の「このマンションじゃない気がする」の一言に、来たことのある蒲田さんが従って、ぐるぐるとマンションの周りを回っていたらしい。
「今日は大丈夫、先週来たばかりだから」と蒲田さんは胸を張るのだが。暫く行くと、赤地に白の『十字式』という看板が目に飛び込んで来た。品川の第一京浜沿いの商店街の中にあって、郷愁を誘うような紅白の懐かしい看板だ。やれやれ無事到着と、ドアを開こうと思ったのだが、蒲田さんはまだまだズンズンと進んでいる。「蒲田さ〜ん、入り口は別なのぉ?」と叫ぶと、慌てて入り口まで戻って来た蒲田さん「ケイコさんに、全体像を見せてあげようと思って、ククク」って、ばれている嘘に腰を折って自分で笑っているのだった。
受付は、スチールの机を挟んだだけの質素なもの。向こう側には、ボランティア?という感じのオバサンが二人、エプロンをして座っている。初めての私は住所・氏名・電話番号を申告しなくてはいけないのだが、この用紙が10cm×7cmくらいの、これ以上小さくしたら記入用紙としては無理かなという大きさだった。十字という名前からお察しの人もおいででしょうが「この行事は、宗教法人に基くキリスト教伝統のいやしとして、行政承認がされたものです」と、手渡された“賛助会員証”に明記されている。なるほど、受付のしつらえも、記入用紙のつましさも、みんなキリスト教の教えね、と勝手に合点。「施術は、すべてのヒトへの無条件の救いを目的とし、従ってそれぞれの宗教的な自由を制限するものではありません」の項目にはホッと胸を撫で下ろす無宗教の私だった。
待合室もコの字型と、その中央に2列茶色のソファーが置かれているだけだ。座っている人は殆どが年配者で、杖をついている人や義手の人もいる。多分、押したり引いたり刺したり突いたりの経験をした人達がたどり着いた“エデンの園”といったところだろうか。それなら、私のアンヨも痛みが無くなり、園をスキップできるようになるかしら。
症状をそばに控えている、これまたボランティア風の小母さんに説明し宗癒師なる人の前に背中を向けて座る。すると背中に向かい宗癒師が「スッ、スッ」だか「シュッ、シュッ」だか言う掛け声を掛けてくる。様子はまったく分からないのだが、時々「ここが異常に出っ張っているね」なんて言って触れられた箇所はピピッと痛みが走る。しかし、暫く後にもう1度触れられると全く痛みは感じなくなっている。(おんや?)やっぱり不思議。それより何より「立ち上がって足踏みをしてみて下さい」と言われ、おそるおそる足踏みをしようとした途端、昨年の暮れより引きずっていた足がヒョイッと上がってしまった。自分の目が見開かれ、満面笑みになっているのが分かる。「藁をもすがる思い」そして「騙されたつもりで騙されに来た」ものだから、これには心底驚いた。
殆ど触れられもしないので痛くも痒くも無い。それまで、とっても熱心なマッサージに通い、これはこれで有り難かったのだが、痛みのある時は触れられることに恐怖を感じる場合もある。患部に触れられずに治ったら、こんなに嬉しいことは無い。
キツネにつままれたような気分のまま施術はアッという間に修了。料金は前払いだし、さてトットト帰りましょう。蒲田さんはと見ると「お手洗い」と書かれたドアに正に今、手を掛けようとした所。「蒲田さん、トイレ?」と聞くと「ううん、帰るのよ」と、何を言っているのという顔で振りかえる。「だって、それトイレのドアよ」。
「やだ、やだ」とか言いつつ、人の肩をボンボン叩きながら私に従って出口を後にした蒲田さん。体はもちろんだが、蒲田さんと通へば精神的にも癒されるのは保障付だ。
翌日、駅の階段を痛みを感じずに昇ることができ、またまたビックリ。施術から3日たち、階段の昇りはすでに痛みがぶり返してしまったけれども「信じる者は救われる」「鰯の頭も信心から」。兎に角、いつか和らぐことを信じ、癒し系の蒲田さんと暫く通ってみることにいたしましょう。何よりも待合室のパンフレットにあった「あなたは信じなくても、我々は誠心誠意施術します」という一文に感激してしまった私だったのだ。
そうそう、この話をマサちゃんにメールで送ったら「頭が良くなるなら私も行きます」という返事が来た。ウーム、それはどうだかなぁ蒲田さん、2度行ってるけど…(笑)