2005-05-01 日
土手医者
地球が回る目が回る。
またしても、「メニエール症候群」になってしまった。
「メニエール病」と「メニエール症候群」とは違うのですよ。
ここでちょっと文献を紐解くと。
『めまいの発作が、耳の病気から引き起こされることを初めて提唱したのが、フランスの医師メニエールであったことに由来して、内耳性のめまいのことを「メニエール病」といいます。「メニエール症候群」は、原因不明でメニエール病のようなめまいを繰り返す状態の名称 (俗称) もしくは、メニエール病のようなめまいを繰り返す、メニエール病以外の病気も含めた病気の総称となるのです』
なので、私はメニエール症候群ということになる。耳は地獄耳と言われるほど良く聞こえるし、このワタクシの病因がそんなに簡単に分かってたまるか。で、ございます。
メニエール症候群の発症は今回で3回目。またかと慌てもしないが、15年ほど前に初めて経験した時の驚きといったらなかった。目が覚めると、天井が、壁が、タンスがグワァン・グワァンと回って迫って来る。起き上がろうにも体が鉛のように重くて、いうことをきいてくれない。横向きになうとするだけで、もう必死。自分の意思で広背筋を動かすのがこんなに大変だとは思わなかった。やっとこ右を向くと右の景色が回りだす。グルン・グルン。こりゃいかんと仰向けになれば天井がグワァン・グワァン。
死ぬ!! 本気でそう思った。ただ、黄泉の国の寸前で帰って来た人が言うところの「走馬灯のように子供の頃からの風景が思い出されて」ということも、お花畑も現れなかったので死ぬことはなかったし、そもそもが死に至る病ではないらしい。
翌日は、ゴキブリにも見放されたくらい食料の無い部屋で大人しく寝ていた。メニエール症候群では死ななくても飢え死にの危険は大いにあったのだ。どうにか翌々日にはベッドを離れることができ、働き者の私は出社した。そして、最上階にある診療所に向かった。
そこには「アワタグチ」と、社員から呼び捨てにされている医師が鎮座している。呼び捨ては親しみの表れではない。様々な逸話が広まるうちに自然と社員が呼び捨てにするようになったのだ。。
例えば、アワタグチ「どうしました?」。A氏「風邪を引いてしまいました」。アワタグチ「風邪かどうかは医者の私が決めます」。そして結果「風邪を引いたようですね」。
アワタグチ「どうしました?」。Bさん「喉が痛みます。イソジンを買ってうがいをしてるんですけど」。アワタグチ「素人が勝手にうがい薬など買うものではありません」。そして、Bさんがアワタグチの指示のもと薬局からもらったのは「イソジンのうがい薬だったんですよぉ」。
さてさて、私が症状を言うと「血圧が極端に低くなってるんだよね。辛いものを食べるとか、しょっぱい味噌汁を飲むとかすれば血圧、上がるよ」。「???」。耳を疑いましたね。ホントに医者かい? 注射も無ければ、薬も出ない。ただ一つ言われたのは「今度、目が回ったら血圧を測ってごらん、低いはずだから」。
こんな人から注射やら薬やらと手当てされたら、余計危なかったかもしれない。翌日、休みを取ってはるばると、幼い頃にかかっていた実家の近くの医院に行きました。そこでは、アワタグチが教えてくれなかった病名を教えてもらい、馬にするようなぶっとい注射をされ、薬をもらい、「お大事に」と診察室から見送られたのだった。これですよ、これが病院のお医者さんですよ。
ぶっとい注射と薬と、まっとうなお医者さんのおかげで、初めてのメニエール症候群は落ち着いた。聞くところによると私の症状は、あれでもかなり軽い部類に入るらしい。中には酷い吐き気が伴い、一日中洗面器を抱えていなくてはいられないような人、船酔い状態そのままで「船旅で世界一周したような気分。飛鳥のような豪華客船でなく大荒れの海を手漕ぎボートでね」と、聞くも涙の人もいる。
症状はおさまったものの、さすがに手漕ぎボートでの世界一周はしたくない。しかし病因が分からないのだからどう対処したら良いものか。まずは周りの人達に「優しく労わってね」と言いまくる。その上で、美味しいものを食べに行く。栄養のあるものをモリモリ食べて、お約束の軽く一杯。その上で、好きなジェットコースターの禁止命令を自分に出した。他の禁止事項は、高いところの物を取ってはいけない。重いものを持ってはいけない。無理をしてはいけない。そして働き過ぎてはいけないというところ。
そして、三回目の今回はもう余裕。さすがに社は休んだが、シンパの皆様に「SOS、メニエールです。栄養のある食べ物を宜しく」のメールを送った。中には「メニエールって美味しいフランス菓子って響きですね」なんていう輩もいたが、とにかくこれで飢え死にの心配は無し、テレビでも見て安静にしていましょう。そうそう思い出しました。かのアワタグチが言っていた「測ってごらん、低いはずだから」が本当かどうか血圧測定をしてみよう。
結果、上が110で下が50。なんとアワタグチは間違ってはいなかったのだ。十五年も前に献上した“土手医者”の称号の返却を要請しなくてはいけないだろうか。
土手医者の意味が分からない? 藪よりも、もっと見渡すことのできない医者のことですよ。