2005-06-19 日
並ばにゃ食えない横浜ラーメン、並ばず触れた月の石
行列が嫌いだ。ミーハー気質ではあるので、人だかりがしていると「なんじゃ、なんじゃ」と覗いては見たいが、行列の最後部に並ぼうという気はまったく起きない。だって、この姫体質よ。〔1時間待ち〕なんていうプラカードの後ろに並んだら、たちまち貧血を起こして倒れてしまう。
中学生や高校生の頃、何度保健室に運ばれたことやら。ある日の朝礼では、生徒たちから嫌われていた教師が、校庭の朝礼台の上に乗って、何か声高に話していた。其の時、立っているのがやっとというほどの貧血症状。列の目の前の友達の背中に触れて「気持ち悪い」と訴えた。すると彼女は振り返りはしたものの「ホント、気持ち悪いよねぇ」とだけ言うと、クルリと踵を返してしまった。私が単に、壇上の教師を気持ち悪がっていると取られてしまったのだ。その途端に私はガマンできず、しゃがみ込んでしまった。そして、実情を悟った彼女に謝られながら又しても保健室へと運ばれたのだった。
高校三年生の時、日本で初めての万国博覧会があった。名古屋ではなくて大阪ですよ。学校が、本来は二年生で行く修学旅行を三年生に延期して、わざわざ万博見学に組み替えてくれたのだ。其の時も行列が嫌さに、同じように軟弱な精神の持ち主の友達と名前も知らない異国の、がら空きのパビリオンや、果ては人影すら無い日本庭園なんぞをのんびりと歩いていたものだ。当然、アメリカ館の目玉「月の石」も見なければ、太陽の塔すら記憶に無い。ところが「月の石」は万博で行列に並ばなくても、後年、見るだけじゃなく触ることまでできたのだから私って、やはり普段の行いがいいってこと?
「私の記憶が正しければ」日本橋高島屋特設会場で、アポロ展というような催しが開かれた。もう20年も前だろうか。その時に、あの「月の石」に触ることができたのだ。シャーレのようなガラスケースに固定された3センチほどの石、それは想像していた軽石のような表面ではなく、つるりとして金魚鉢の中にでも入っていそうな、ブルーがかった灰色のものだった。触れるだけでなく「あなたは月の石を触りました」という名刺大の証明書までもらえた。
この春に、その「月の石」を一緒に触った、近所の子供だったところの青年と母を連れ、横浜のラーメン博物館に行ってみた。日本で初めての食べ物に関するテーマ・パークであるラーメン博物館は、ラーメン大好きな母を是非とも連れて行きたい所だった。昨年の夏、お台場のヴィーナスフォートに行き、本やテレビで見るラーメン博物館の風景と重ねていたものだ。
ところが、なんなのさぁ。混んでるなんていう生易しいものではない。3階建の2階部分に店舗があるのだが、8店舗の客がテーマ・パークの広場を占領して列をなしている。その喧騒たるや。昭和へのノスタルジーからか照明も薄暗いし、どことなく埃っぽい。思うように身動きもとれやしない。もう、ハナから列に並んで食べることはあきらめた。因みに一番短そうな列でも〔40分待ち〕。せめて記念撮影だけでもとデジカメを構えると、駐在さんの格好をしたスタッフが飛んで来て、おどけながらシャッターを押してくれる。押し合いへし合いで階段を登り、赤地に白で「たばこ」と書かれたホーローの看板が下がる懐かしいタバコ屋さんの前で、もう1枚と考えていると今度は駅員さんだ。こちらも愛想よく構図も考えながら「はい、ラーメン」。スタッフが、あんなに一生懸命に動き回っているのに、あの狭さではそのサービス精神も生かしきれないのではないだろうか。もったいないなぁ。
ラーメンを食べるために入場料を取られるという不平は耳にしていたが、田舎から出てくる母に、懐かしい昭和30年代の風景を満喫してもらい、大好きなラーメンもより取り見取りに選んで食べてもらえるなら文句は無いと思っていた孝行娘も、何ひとつ満喫できずの入場料300円也では文句タラタラです。家に帰り、インターネットで「横浜 ラーメン博物館」を引っ張って来たら、ご意見受付のメールアドレスがあった。ご意見、言わんでか。「どしてくれる、責任者出て来い」と思いっきり苦情メールをいたしました。
その返答が「当日は浜崎あゆみのコンサートが近くで開催され、人出が多かった故と思われます」だって。こんな答って“あゆ”? モトイ、ありですかぁ。
後日、実家で、この混雑を義妹に話すと義妹は悠然と言ったものだ。「そのくらい待つの当たり前ですよ」。じゃぁ、待って食べたのかと重ねて聞くと。「食べましたよ、何処に行っても有名な所はみんな行列ができてますから」。両親、長女である私、長男である愚弟のネーティブ姫宮一家は、何処に行っても行列に並ぶということはしない。並ぶくらいなら食べない、見ない、欲しがらないという性分なのだ。そう言えば、花粉症の話が職場で出た時「姫宮家では義妹以外、姪も含めて誰も罹っていません」と言ったら、上司がいみじくも仰ったっけ。「やっぱり嫁は他人だな」と。やはり義妹は、どこまでも他人だったのだ。
行列は嫌いです。ただし、バラを抱えた殿方が姫宮めがけて門前市をなすのであれば、その限りではありませんが。