2005-07-24 日
出張シェフ
朝食・トーストとミルク。昼食・トーストとミルク。夕食・トーストとミルク。これが365日続いても私は全く気にならない。朝はこれにヨーグルト、夜は納豆をつけますよ。昼は、そうねぇチョコレートかな。以前、こんな話になった時、ツアコン絵美ちゃんと、このHPの管理人であり編集者である某氏が「バカなんじゃない?!」と私の顔を見ながら言った。そこに、京おんなの美里さんが「友達を疑ってはいけない、姫宮はバカなのだ!!」と、結論づけてくれた。以来、食事の話になると「姫宮バカ説」は定説となって語られている。
しかし、そんな姫宮のマンションにも、3口のガスコンロをもつイッチョマエのキッチンがある。しかも使われないから新品同様に美しい。ここで腕をふるうのは家主ではなく、たずねてくるお客様方。絵美ちゃんであり、リカコであり、植田ということになる。
絵美ちゃんは、リカコが大好きなV6坂本くんのご実家であるところの八百屋さん、亀戸の坂本商店で購入した野菜を抱えてやって来て、チャッチャと何皿もの料理を並べてくれる。この坂本商店には亀戸天神にお参りに行くという口実のもと、リカコに連れて行かれたことがある。坂本くんのお母さんと私の従姉妹の名前が同じということで、リカコに羨ましがられている。錦糸町に住まいし絵美ちゃんも、坂本商店に近いって羨ましがられているのだっけ。そんなリカコも、買ってはみたものの、手も足も出ないパソコンのメンテナンスを頼んだ時、わざわざ足を運んでくれた上に、トマトと牛肉と卵のスープ、櫃まぶし、春雨のサラダを、まるで自分の家のキッチンでのように、手馴れた様子で作ってくれた。私が「美味しい、美味しい」と食べていたら、ちゃんとレシピまで書いてくれた。もちろんレシピを見ても私が作らないことくらいリカコは百も承知。誰かに作ってもらいなさいという優しい気遣い(?)だ。植田に至っては、退社時間に突然電話が鳴り、「東京駅のホームで待ってるわ」。言われるままにホームに向かうと、右手にワイン、左手に食材を抱えた植田が立っている。「どこ行くの?」と問う私に「たまには貴女に、まっとうな食事をさせようと思って」って。
ウチのキッチンは主より客人の方が物の在り処まで心得ている。「料理しないのに、パエリヤ鍋まで有るのよ」とか「包丁もまな板も行平鍋も、生意気にも木屋のなのよ」「わさびを摺ろうとしたらサメ肌のオロシがねまで持ってるのよ」なんて客人同志でやっている。そう言えば、そんなのも持っていたっけ。普段は、お湯を沸かすだけのキッチンが、皆様方のお陰で活気付く。有り難や、有り難や。
中でも、皆が喜ぶシェフはP氏だ。P氏は下町の元祖カギッ子の一人っ子。小学生の頃から、一人で惣菜やさんをのぞいたりしながら、自分で創意工夫した様々な料理を作っていたらしい。だからその腕を、日ごろ一生懸命に働いてくれているスタッフさんに是非とも披露したかったらしい。しかし、住まいが成田に程近い場所とあっては、なかなかそこまでご足労願うのは厳しいものがある。そこで、客が勝手に使うキッチンの話を耳にし、これだと思ったらしくおずおずと、お伺いを立ててきた。私もご相伴に預かれるなら文句は無い。喜色満面P氏の奮闘が始まる。会社の帰りなのでスーツ姿のまま、アタッシュケースとスーパーのカゴを同時に持っての食材選び。キッチンでは鍋、フライパン等の道具や食器、調味料の点検。「色々揃ってるじゃないですかぁ」って、これまた皆さんと同じ反応は褒められたのか責められたのか。
洗面所で何やらゴソゴソやっていたと思ったら、Tシャツに短めの前掛け、そしてバンダナと、やる気満々の姿で現れた。そんなP氏だから、手際の良いことあざやかなこと。「あのぉ、何かお手伝いできることが有りましたら」と、家主は聞いてみるのだが「テレビでもご覧になっていて下さい」。素直な家主は奮闘しているP氏のことも忘れテレビに夢中。おっといけない、せめてテーブル・セッティングでも。こんな時に役立つのがダイソーで買った105円也の和紙製ランチョンマットだ。花や紅葉が透かし模様のように入っていてなかなかお洒落。いよいよ、今日の主役であるスタッフさん2人も到着。なぜか植田もいるんだよね。私はランチョン・マットを敷いただけなのに、3人は華やいだ気分に喜んでくれている。それに会社の姿と一変したP氏の新鮮な姿にも大はしゃぎだ。いよいよ、お食事。お運びくらいはやりますよ。まずはお通しに、とろけるチーズを乗せて焼いたはんぺん。そして烏賊と大根の煮付け。長芋、おくら、納豆といったねばねば系に刺身用の烏賊とイクラをのせた海鮮やまかけ。それからバジリコスパゲッティ醤油味、プレーンオムレツ、グラタン・・・もう、文句のつけようがない。そして何より素晴らしいのはこのシェフ、女性4人が「美味しい、美味しい」と食べている横でニコニコしながらビールを飲み、そのうち満足したようにウツラウツラと居眠りを始めたこと。
こうなりゃ女性4人はP氏に感謝しながらも、静かにお休みいただいている横で思う存分お喋りに興じられるというもの。食事の用意はしてくれる。お喋りには口出ししない。もちろん、味も良い。これこそ理想のシェフ像ですね。
「ねぇねぇ、今度何を作ってもらう?」何も知らず、満足気に居眠りをしているP氏の横で女共の会議は踊る。腕に自信のある方、いつでも“マンションのキッチン貸します”。