「おい、世の中のチャラチャラしたやつら。今日はお前らに言いたいことがある。よぉーく聞け!」。

魔邪だ。最近人気のお笑い芸人だ。魔邪が舞台に登場すると、まずはその独特な髪型に目を奪われる。耳の上数センチを、清原の五厘刈りよりもっと短く、グルリと剃っている。中央の髪は束ね、脇は落ち武者のようにザンバラだ。そしてその髪を、ご丁寧にもミドリと青、それから、オレンジ色に染めている。身を包むのは紫色をしたプロレスラーのコスチュームだ。肩にはスポーツタオル。ハンドマイク片手に「ヒトォーツ」と、桃太郎侍のように、不埒な奴らに苦言を呈する。これが、三十路になるかならないかと思われる女性なのだから恐れ入る。

しかぁし、そんなチャラチャラしたやつらへの苦言なら、魔邪よりほんのちょっとだけ人生長く経験している私の方がある。

「ヒトォーツ」電車の中で平気で化粧をするおんな。先日は雨の日の込み合った車中で立ったままアイラインを引き、マスカラを塗り、口紅をさしている“やつ”がいた。もう見飽きた光景だが、さすがにこの日は驚いた。雨水の滴る傘を腕にかけ、大きなバッグは足の間に挟み、一心不乱に鏡の中の自分を見つめて手を動かしている。全く自分しか見えなくなっているのだろう。こんな時には急ブレーキでもかかり、目が、口が口裂けおんなさながらにはみ出して描かれてしまえばいいと思うのだが、まだ一度もそういう機会にはめぐり合っていない、残念。どんなに綺麗に化粧しても、電車の中のそんな様子を見たら、今まで褒めてくれていた彼氏でもきっと興ざめしてしまうだろう。

「ヒトォーツ」いつも、口を半開きのままにしている“やつ”。見ていて、ついつい「口を閉じろ!!」と言いたくなってしまう。だが、言わない。今のご時勢、正義が勝つとは限らないほど、おかしな“やつ等”が多すぎる。まったく、自分の半開きの口が街を歩いていてショーウィンドーなどに写るのを見たことはないのだろうか、その間抜けな形相を見て、なおさら口をあんぐりしないのだろうか。きっと、こういう“やつ”は何事においてもしまりがないのだと思う。その証拠に電車の車両から車両に移る時、こいつらは間違いなくドアを開けたままである。冬じゃなくともビュービュー風が吹き抜けて「迷惑なんだよ!」。魔邪ならここで思い切りマイクを舞台に叩きつけ、ゴングが鳴り、ポーズをつけるとこだ。

ところで、なんとこの「ポカン口」、調べてみたら大変な事実が判明。「ポカン口」による口呼吸では、唾液の蒸発により唾液の働きが弱まる。すると、口や喉の粘膜に細菌が付きやすくなり、口臭、虫歯、いびきといった様々な弊害をもたらす要因になるらしいのだ。「驚いたぁ!」って、ポカンと口を開けてるんじゃない!

「ヒトォーツ」ミュールだかなんだか知らないけれど、バックバンドも無いサンダルでオフィス街や駅構内をカタカタ、カタカタと音を立てて歩いている“やつ”。うるさいんだよ。第一そんな不安定な履物で、ごった返す駅の階段の登り降りは自分自身が危ないと感じないのかねぇ。最近はフランス語のお洒落な呼び名をもらっているが、昔はそのまんまツッカケと呼んでいた代物だ。そんな物は庭先や、サザエさんがお財布を忘れたまま買い物カゴを下げて近くの魚屋さんに行くときに、文字通りつっかける履物なんだよ。お洒落は足元からと言うだろが。足元をすくわれそうになりながら、へっぴり腰で階段を登ってないで、しっかりとした履物で胸を張って歩いた方がよっぽどカッコイイというものだ。

「ヒトォーツ」所かまわず、声だかに乱暴な口調で喋る“やつ”。なぜか最近の若者にはやたら大声で話す“やつ”が多い。目と鼻の先の相手に向かい、はるか彼方に居る人に届けというほどの大音声で、しかも乱暴な言葉を口にする。以前、友達が言っていた。「頭の良い人は耳がいい」。この際、語弊を恐れずに言っちゃうと、逆もまた真なりで「馬鹿は耳が悪い」ということになろうか。だから、自然と声が大きくなると。そうなのですよ。電車内やエレベーターという小さな空間、しかも他人さまが乗り合わせる場で大声で喋ってる“やつ”に賢い人が居るとは思えない。つい先日の東京を襲った震度5強の地震の時も、安全点検のため運転を見合わせていると説明する駅員に「マジ、むかつく!」とはき棄てる若い女性を見た。自然界の脅威の前で少しでも危険を避けようと、必死で働く駅員さんに向かってその態度は無いだろうと呆れたものだ。

ワシントンに15年間在住の日本人、56歳さんが言っていた「無性に日本が恋しくなることがあります。そんな時は、日本に帰ってはみるのですが、その都度、変わっていく若い女の子達を見るとガッカリします。そして、結局ワシントンにトンボ帰りをしてしまうんですよ」。

世界中の殿方に言いたいことがございます。「よぉーく、お聞き下さい。皆様の憧れた“大和なでしこ”は、今ではこのわたくしだけになってしまいましたのよ」。おーっホッホッホッホッ