2005-10-16 日
運動会
暑いんだか寒いんだか、涼しいんだか温(ヌル)いんだか、よく分からない気候の今年の秋だ。でも肝心の体育の日、関東では雨。あちらこちらの運動会会場は一体どうしたのだろうか。
運動会と聞いて最初に思い出すのは、父の出場した“自転車遅乗り競争”だ。私の生まれ育った町には現JR、旧国鉄の官舎もあり、かなりの割合で国鉄職員の家族が住んでいた。秋になると小学校の校庭を借りて大運動会まで催されたものだ。その中で父は“自転車遅乗り競争”にエントリーしていた。6台の自転車が横一線に並ぶ。ギア付やママチャリではなく、いかつい大きな荷台のついたものばかりだ。「パン!!」というピストルの合図のもと、どの自転車もバランスを取りながらヨロヨロ・ノタノタと進む。みな固唾を飲んで見守る中、1台の自転車がまるで競輪の選手のような素早さで走り抜けた。「おとうちゃんだぁ」。父は5台の自転車がゴールせずに頑張っている横を参加賞を手に、とっとと家族の元に戻って来た。「あんなモタモタしたことやってられっか」。江戸っ子でもないのに父は気が短いというか、せっかちな人だった。家族で出かけるとなると予定の30分も前から玄関で「さっさとしろ」と叫んでいる。そんな時に決まって出る台詞は「ノロイことは牛がするんだ」。そういう父は大正14年の丑年生まれだった。
社会人になってからは社内の運動会に2回だけ参加した。バブルが弾けてからは開催されなくなってしまったので貴重な経験だったと思う。その2回目の運動会でのメインイベント、部対抗のリレーで我が部が優勝する奇跡を、もうちょっとで見ることができたのに…。
バレーボール大会に出場すれば整列した時点で、主審が我が部に贔屓することを宣言するほどの、運動とは縁のない部署だった。しかし、部長以下ノリの良い部員で構成されていたもので社内の催しには周りの迷惑も顧みず、一同うち揃って片っ端から参加していた。バレーボールでは、主審のご好意を受けてフルセットまで戦わせてもらっても7分で敗退。残念会の飲み会の方に遥かに時間をかけたものだ。だから、飲み会の途中で一体何ゆえ呑んでいるのかさえ分からなくなるような状態だった。
野球大会に出れば、アンパイヤの後ろにもう一人、特別に捕手に待機してもらうという特別ルール(?)まで設けてもらっていた。そこまでしてもらっても、高校野球より差が開き、当然のように3回でコールド負け。そんなチームが奇跡のように今、リレーでアンカーが先頭を走っている。2位以下を遥かに突き離している。部員は皆、大喜びでゴール地点に揃いテープが切られる瞬間を待った。ところが、ゴール寸前でとんでもないアクシデント。ゴールの手前5メートルほどの所に引いてあった白線を思い違いしたアンカーの新人部員が、誰に見せたかったのか、ヒーロー気分でバトンを空高く放り投げたのだ。今でも、赤いバトンが青空に吸い込まれるように上がっていく様が目に浮かぶ。「バカ、違う!!」「拾え、拾え!!」という部員の叫び声、アタフタとバトンを探す我が部のアンカー。やはり奇跡は起こらなかった。めったに無いから奇跡だけど、あそこまで迫っていながら取り逃すのも奇跡かも知れない。その後の祝勝会改め残念会で、183cmの新人部員が消えて無くなりそうなくらいに小さくなっていたのは言うまでもない。
ところで、友達から最近の小学生の運動会事情を聞いて驚いた。彼女の息子は小学2年生なのだが、昨年のピッカピカの1年生の時は「かけっこでは、みんな一緒に手を繋いでゴールなんですよぉ」だったそうな。順位をつけちゃいけないんだって。そして今年は「男の子と、女の子が3人ずつ一緒に走るんですよぉ」って。なんじゃそりゃ?!と思う。最近は何事も差別しないとか男女平等にとか言われ過ぎて、こんなことにまでなっていたのかと呆れ返る。
「男の子の中で、ビリにはなるなと言ったんですけどね」って。男の子の中ではビリでも3位だし、2位でもブービーだなぁなんて感心(?)したりもしたものだ。
私が子供の頃の運動会と言ったら、ふだんは勉強が出来ないと言われている男の子が、かけっこではヒーローになったり、逆に優等生がビリになったり、それでも皆それぞれの個性を子供ながらに尊重したものだ。のび太君が居てジャイアンが居て、すねおが居て、しずかちゃんが居るのが自然な環境だと思う。かけっこしたら早い子がいて遅い子が居て、順番がつくのが当たり前だろう。男の子と女の子の体力に差があるのも当たり前だ、と思っていたらナント『小学生の運動能力は低下が続き、9歳男子の50メートル走の平均記録は約20年前の9歳女子の水準にまで落ちたことが9日、文部科学省の2004年度「体力・運動能力調査」でわかった』だって。ほら、ありがたい平等教育のおかげで、運動能力も下降修正(?)で、男女平等が実現されつつあるわけだ。
それにしても考えたら恐ろしい。親の保護下にある学童のうちは「みんな一緒ですよ、仲良くしましょうね」なんていう平等教育を受け、中学生、高校生になったとたんに受験戦争に追いやられる。そして、社会に出たら平等なんてあり得ないという現実を突きつけられるのだ。これじゃぁ、ニートやら引きこもりが増えるのは当然ですよ。
この際、将来のために周りの姪やら甥やら子供達に今から現実を教えておいてやろう。
「愚か者や怠け者は、差別と不公平に苦しむ。賢いものや努力をしたものは、色々な特権を得て、豊かな人生を送ることが出来る。それが、社会というものです。あなたたちは、この世で、人もうらやむような幸せな暮らしが出来る人が、何パーセントいるか知ってる? たったの6%よ」あっこれ、この夏話題になった『女王の教室』の教師、真矢の名台詞でした。