2005-10-23 日
あっ、やだ、矢田
夢を見た。私を孫のように可愛がってくれていた近所のおばちゃんに会いに行く夢だった。そのおばちゃんは、10年以上も前に他界している。私は夢の中で、長野原の山小屋で静養中のおばちゃんを訪ねていた。なぜか、おばちゃんは目の前にいるのに、二人の間にはとても綺麗な水の小川が流れており、その小川のほとりには花が咲いていた。直ぐに飛び越えて行けそうな幅の川なのに、私は飛び越えることをしないで川のコッチ側をひたすら走って、アッチ側のおばちゃんに近づこうとしているのだった。そして、おばちゃんに向かい「元気でねぇ」と叫んでいる夢だった。目が覚めてからしばらくは夢と現実が合わさって、とても妙な心持ちだった。久しぶりに、おばちゃんにどっぷり甘えられた私は、直ぐにでも夢の世界に戻りたいような気持ちにもなった。
その夢の話を絵美ちゃんにすると「うわー! 渡らなくて良かった。 渡ったら死んじゃうとこでしたよ。 大丈夫ですか? 体、どっか悪いとこない?」と、心配してくれた。悪いところと言えば、真っ先に浮かぶのは当然ながら頭。昔は鬼のような記憶力を誇っていたものなのに、今では『物忘れ外来』に行こうかどうしようかと考えながら、そのうち考えてたことも忘れてしまう。そして目、首、肩、腰、足と満身創痍の悲しい状況だ(ン、内臓は丈夫だから太るのか)。
しかし、一番気になるのは毎日のストレスだろうなぁ。そのストレスの原因とは、辞める辞めると狼お姉さんのように言い言い勤めている会社に決まっている。しかも、ここ2年程が特に酷い。ストレスの原因のそのまた最大の要因は、ニュースでもよく耳にする隣人問題だ。そう、2年前から隣の席に異動になってきたお・ん・な、矢田だ。(この際、敬称略)。どうしても合わない。私は大人だから、ラジカセを大音声で流したり階段の踊り場で刺したりなどは決してしないが、その代わりに今こうして世間様に一方的に愚痴を聞いていただくという姑息な手段に出ている次第。
朝は毎日遅刻してくる。全く悪びれる様子無し。上司に注意してくれるように言っても「今までの職場でもアアだったらしいから今更言っても」と取り合ってくれない。せいぜい私が「あら、お休みかと思った」と精一杯の皮肉を言うに止まっている。こういう時は矢田と上司とのダブルでストレスとなる。遅刻して来るくせに、その手にした袋からはスタバのコーヒーの香りが漂い、スナック菓子がはみ出している。それこそ1日中食べるか飲むかしている。今だって決して細めではないのだから10年後、いや5年後に反動が出ることは間違い無いだろう。ただでさえ美形とはほど遠い姿かたちなのだから「ちょっと考えた方がよかないかい」と、友達なら注意してやるところだが、友達じゃないので黙って横で呆れている。
私のトイメンのP氏に至っては、矢田から「同じビール党同士、たまには呑みに行きましょうよぉ」なんて誘われても「俺はブスとは呑まない」と私に言って、ご本尊には丁重なお断りを入れている。そうそう、部の飲み会で餌食になった吉田君は見事だった。彼もお酒は大好物なので酒豪の矢田と酌み交わし、いつの間にか腕まで組まれしなだれかかられ「ねぇ、私のこと好きなんでしょ」なんて、思いっきり迫られていた。蛮声も振るい目もすわり、どこからどう見ても立派な酔っ払いなのだが、矢田の繰り返す「私のこと好きなんでしょ」には、がんとして首を縦に振らなかった。正気の部分が残っていた人たちは一同に、踏みとどまる吉田君に拍手をしていた。でも、あの時酔った勢いで吉田くんがウンと言い、矢田が寿退社をしてくれていたらどんなに良かったか。初めて羨ましくない花嫁の誕生だったはずなのに。
静かで楚々としたこのワタクシに対し、そりゃぁもぉ「がさつったらありゃしない」の隣人、矢田。書類棚の開閉もバタン・バタンと力任せににやるものだから、彼女が閉めた後は反動で扉が半開きになってしまう。それを静かに閉めるのは私の役目。閉めてるのを見たら気づくかと思うが、ガサツ者はまったくもって無頓着。矯正にも嫌味にもなりゃしない。何でも力任せのバタバタさんだから、椅子にもデンと座ってそのまんま椅子ごとドテンと転倒したことがある。さすがに「ダ・ダイジョウブぅ?」と尋ねたら「大丈夫です」と、照れるわけでも、顔色一つ変えるわけでもなくスックと立ち上がったのには恐れ入った。本心は痛かったろうなぁ、恥ずかしかったろうあぁ。ン、恥ずかしいという文字は彼女の辞書には無いかな。
仕事では、一般人では考えも及ばないようなミスを連発する。内容は社外秘なので(?)控えるが、兎に角「なんで?」「どうしたらそうなるの?」というミスを平然とやってのけ、絶対に謝らない。彼女の辞書には「ごめんなさい」という言葉も無い。代わりに平然と言ってのけるのが「アッ、それ私です。私が間違えました」。これって正直でよろしいって、桜の樹を切った大統領のように褒めなければいけないことなのだろうか。自分のポカを拭うためには平然と周りを振り回す。酷いトコでは、徹夜明けの仮眠室にまで電話をかけまくる。そして、さんざん迷惑をかけ、助けてもらっていながら「仕事じゃないですか」と言ってのけるのだから開いた口が塞がらない。
ある大ポカをやった日の退社寸前、彼女がトイメンに座る男性に言っていた。「今日、取り返しのつかない失敗をしちゃいましたぁ」。おや珍しく反省してるんだぁと思って聞いていたら「今日まで、全品500円の中華に行くのすっかり忘れて、お昼カレーを食べちゃったんです」。そっちかい?! 凄いよなぁ、私だったら大ポカをやった後で、ランチなんて気分にはなれません。
どこをどう取っても姫体質の私には太刀打ちなどできそうにない。これからも姑息にネットのおまじないの頁や、呪いの頁なんぞを見て、目の前から矢田の消える日を祈るっきゃない。ン、私が消えた方が手っ取り早いという真理もありか。
「吉田く〜ん、私のこと好きなんでしょ?!」