2005-11-13 日
休日出勤
「今朝は、ほぼ全国的に晴れています。この後も北海道から中国・四国地方にかけて、穏やかな秋晴れ。絶好の行楽日和でしょう」土曜日の朝、にこやかにテレビの中からお天気お姉さんが語りかけてくる。だからなんなのさ。私は今日も出社よぉ。
何が悲しくて、こんな職場に居なきゃならんのだか。土曜日の出社は当たり前、日・祭日だって、年末年始だってゴールデン・ウィークだって、交代で出なくてはならないのだ。マンションの玄関を一歩出れば、いつもの通勤通学風景と違い閑散とした街に、軽装のカップルなんぞがスキップでもしそうな様子で通り過ぎる。電車に乗ればガキが、いえいえ御家族連れがお賑やかに楽しそう。その挙句に改札口でたむろして邪魔だったらありゃしない。なんだって私はこんな日に仕事をせねばならんのか。
ともすれば、他所を向いてしまいそうなアンヨを無理やり会社に向ける。普段の倍くらいの重い足取りで辿りついた会社のMY DESK。PCを開いてガ・ガ・ガ〜ン。なんと「本日はインターネットとの接続ができません」だって。な、な、なんですとぉ?! てぇことは、今日は1日、仕事だけしてろってことぉ。そんな殺生なぁ。ネットができてこそのPCです。土曜や祭日に出社しては、友達に「土曜なのに出社してまぁす。慰めのメールを下さい」なんて打って、返事が来た時の嬉しさよ。土、日、祝祭日に出社した時の安らぎは、そんなトコにしかないじゃないの。バージョンアップだ、ウィルスバスターだ、メンテナンスだと言っては、システムの部署がインターネットを止める。一体私の心のメンテナンスはドコの部署がしてくれるのでしょう。
おまけに、土曜だから日曜だからと社内のアチコチに工事が入る。この度はなんとトイレの配水管工事。「工事のため使用禁止!!」デカデカと書かれた紙が貼られた大きなゴミ箱が、トイレの入り口で通せんぼをしている。「申し訳ありませんが他階のトイレをお使い下さい」と添え書きはあるものの、不便よねぇ。そして、席まで漏れてくるガリガリ・バリバリという工事の轟音。ああ、この精神状態、どこへ持っていったらいいのやら。こういう時こそ「ねぇねぇ、聞いてよ」とメールで、北は北海道のいづみちゃんから南は福岡のヨコちゃんにまで訴えたいのにぃ。
しかし “人間万事塞翁が馬” 嘆きの天使にも、長い年月には思いもよらぬお駄賃が、ごくたまぁにはあるものです。思い起こせば…何年前だか忘れたが、忘れはしない11月3日は文化の日。やはり出社の憂き目にあった私は、弊社のご近所の読売新聞社本社前から繰り出した、読売巨人軍の日本シリーズ優勝パレードを見ることが出来たのだ。ああ、強かった巨人軍。その元気いっぱいの選手達がギンギラにデコレーションされた3台の、バスをくり抜いたような形のオープン・カーに分乗して大手町の読売新聞本社前から銀座までパレードする。私は大手町の逓信博物館前で、陣取った人たちの間から首を出し、そのパレードを目の当たりにすることが出来た。元木がいる、高橋由伸がいる、金髪の清原がいる。そして、もちろん長嶋監督も。上気した顔が、よく見かける日の丸のように紅いホホの、長嶋さんの似顔絵にとてもよく似ていた。絵そのまんまに紅顔の元気ハツラツな長嶋さん、大きく手を振り、ファンの声援に笑顔で応えていた。また、あんなお姿を是非とも拝見したいものだ。
大手町でお見送りした後は、日本テレビのライブを見る。銀座には人が溢れかえっていた。休日は閑散とした大手町でさえ、人垣が出来ていたのだから休日の銀座ではごった返してあたりまえ。こんな時は休日出勤して良かったと思う。ちゃんと肉眼で、しっかりじっくりジャイアンツのお歴々のご尊顔を見ることができたもの。
そして今年の正月3日は、箱根駅伝の復路。やはりご近所の読売新聞本社に帰ってくる韋駄天達の走りを見ることができた。こちらは、選手だけでなくそれぞれに陣取った大学の応援合戦も賑やかで楽しい。『水10!ワンナイR&R』のゴリエのような超ミニ・スカートで、各大学のチアガール達が飛んだり跳ねたり回ったりしている。こういう場合のミニ・スカートは、階段でお尻にバッグを廻して他人の目を気にしながら「なら、履くな!」というのとは違って、健康ではちきれんばかりの若さが溢れ、見ていて気持ちがいい。
各大学の、6畳分はあろうかと思えるほど大きな応援団旗。羽織袴の団長は高下駄を履いて扇子を振る。和太鼓が、お腹に響くような大音声で打ち出される。肝心の駅伝選手の姿が見える前から大変な盛り上がりだ。土日・祝祭日は休みのはずの海鮮居酒屋も、今日は炊き出しのような大きな寸胴鍋で、海鮮味噌汁を大安売りだ。発泡スチロールの丼にたっぷり入って200円也。う〜ん、晴天とは言え真冬の空の下。海の香りもろとも胃の腑に沁みまする。
ハツラツチアリーダーのダンスも見たし、荘厳な和太鼓の音色も聞いた。寒さの中で、お腹も満たされたし、そろそろ社に戻ろうか。
ン、何か忘れちゃいませんか…という頃になって沿道が賑やかになってきた。そうそう、私は箱根駅伝復路のアンカーが到着するのを待っていたのだった。スタッフから渡された読売新聞社の小旗がワサワサと振られている。その彼方に、見えた。紫色のタスキだ。駒大だ。一昔前のいかつい運動選手のイメージが払拭される。(一昔前の方々御免なさい)小顔に、短く刈ってはいるものの坊主頭とは違う天辺がちょっと尖がったお洒落な髪型、スマートで洗練されたお姿の青年が、紫のたすきをかけ、歯を食いしばって目の前を疾走して行く。ほんの一瞬ではあったけど、その爽やかさに素晴らしいドラマを見たような満足感が残った。
その夜、スポーツニュースにチャンネルを合わせると、紫のたすき・駒沢大学のアンカー柴田尚輝君のゴール直前、人差し指を高く突き上げNo.1を表現する姿が映し出された。ナレーションで4年生ながら、今まで一度も『箱根駅伝』には選ばれず、今年が最初で最後の『箱根駅伝』だったということを知った。ゴール直後に柴田君は顔を覆って男泣きしたそうだ。やはりドラマがあったんだぁ。
今年も既に年賀状が売り出された。そして年末年始の勤務表も渡された。ゲゲ、又新年3日に出社ですかぁ。せいぜい、忘れられないドラマを目の当たりにできることを祈るといたしましょう。そして重ねて祈りましょう、再来年こそはこんな職場にオサラバしていることを。