2006-03-12 日
たまに機転を利かせれば
「山の手線外回りは止まっています。振り替え輸送をしていますのでご利用下さい」。
今にも雨が落ちて来そうな月曜日。ただでさえ「出社拒否症」が頭をもたげそうなこんな日に、重い体を引きずってJRは山の手線・五反田駅に着いたと思ったらこれですよ。改札前では駅員さんが、振り替え用のチケットを配っている。仕方ない、ここは都営浅草線で日本橋まで行き、東西線に乗り換えて弊社のある大手町まで向かうとするか。
都営浅草線のホームに下りると、普段のラッシュ時プラスα人がうごめいている。着いた電車は満杯。けっこう下りる人もいるけれど、同じくらい乗る人もいる。「座れないじゃん」。1台見送る。2台目も見送る。姫体質は、とてもとてもこんな混んだ電車には乗れませぬ。だっていつもは品川までの2駅、3分ほどをガマンすれば殆ど座れるし、帰りは東京駅から100%座れます。アッ、ぶたないでぇ私は女優よ(?!)。かく言う私も、実家から1時間半以上をかけて通っていた頃は、片道乗車時間17分なんて聞いた日にゃぁ、そんな楽してるヤツはぶん殴ってやるって思ったものだ。でも、長年「乗車時間17分」に慣れてしまうと、ただでさえヤワな体も心も、すっかりワヤな姫体質になってしまうのよね。ごめんあそばせ。
何気なく逆のホームを見ると、ガランガランの車両が優雅に滑り込んで来るところ。都営浅草線五反田駅、片方の終点西馬込は直ぐそこと聞いたことがある。よし、ここは“女は度胸”終点西馬込まで行き、始発西馬込で折り返そう。それならば絶対に座れると踏んだ。「さぁどこでもご自由にお座り下さい。なんなら横にでもなれますよ」ってくらいに乗客の居ない車両でノビノビと座席を確保し、まずは逆方向の西馬込を目指す。直ぐそこと聞いていたので、私は勝手に2ツ目の駅だと決め付けていた。ところが、いざ乗ってみると2ツ目の駅はとうに過ぎ、4ツ目でやっとこ終点西馬込に到着。(まったく、私の根拠の無い確信には困ったものだ)なんて自分で呆れながら、6分後の折り返し運転を待つ。日本橋方面に向かって走り出した車内はガラガラ。ところがそんな車両も五反田に着くころにはほぼ満杯、座る余地などありません。やっぱり度胸をもってトライして良かった。
JRの前身、国鉄職員の娘に生まれたせいか電車に乗っているのは好きで、どんなに長くても苦痛にはならない。ランチ仲間の智子さんのお舅さんが亡くなられ、西国分寺にある斎場でのお通夜に列席した時のことだ。往路は五反田→東京→西国分寺と、山の手線と中央線を乗り継いでスムーズに辿り着けたが、復路は果てしない旅になったことがある。斎場では同期入社の長谷川悦っちゃんが寄ってきて、お焼香から精進落としまで何くれとなく私の世話を焼いてくれた。どうも私って、姫体質がにじみ出ているらしく、何かの際には誰か彼かが現れて面倒をみてくれる。お通夜の席を後に、長谷川悦っちゃんは西国分寺の駅まで私を連れて戻ると「逆方向だわねぇ、ここで失礼するけど貴女は…アッ、あの電車よ。乗って乗って!!」と、乗車する電車まで指示してくれた、というよりお尻を押されて飛び乗らされた。確かに行き先を示す先頭車両のフロントには《東京》と書かれていた。ところがこの電車、行き先こそ確かに《東京》ではあるが、まずは新小平→新秋津と多摩を通り、東所沢→新座と進み、美郷までは埼玉県、武蔵野線という路線だ。途中では西浦和・武蔵浦和・南浦和・東浦和と、4ツも浦和を通り越した。因みに浦和と名のつく駅名は他に、中浦和・北浦和・浦和美園そして本家(?)浦和と8ツもあるのだよ。ご存知でしたか?
三郷を過ぎたら千葉県に突入。南流山→新松戸→東松戸→西船橋と来て、アララ新浦安→舞浜と京葉線に乗り入れているではないの。そして気付くと東京ディズニーランドがライトアップされ、シンデレラ城がまぁ綺麗。夕方も明るいうちに電車に乗ったはずなのに、既にしっかりと夜の帳が下りている。
東京→西国分寺。行きは30分ほどで行けた所が、帰りに飛び乗った電車では行けども行けども着かないし、埼玉の駅名や千葉の駅名が出てくる。そりゃぁ(おかしいなぁ)と思わなかったわけではない。しかし、行き先は間違いなく東京。それに途中で降りたらこの私、そこから先が分からない。乗降客の変化を楽しみ、窓の外の景色を楽しみ、電車に揺られての居眠りを楽しんでいたら長い旅も終わり、ちゃんと東京駅に帰りつくことができた。
夜の東京ディズニーランドまで見ることができたしね。案外ラッキーだったのかも知れない。なんて私は思っていたのだが、翌日、出社と同時に内線が鳴った。長谷川悦っちゃんからだった。「昨日、電車間違えて教えちゃってごめんなさい。途中で降りてくれたよねぇ」「ううん」「えっ、あのまま乗ってたの?」「だって東京行きだったもん」「……」。この事実が社内に「呆れた」という言葉を飲み込みながら広まったのは言うまでもない。
ところで、山の手線が止まっていたのは運転士が異常な横揺れを感知したからだとか。調査をすると2センチもレールが沈み込んでいる所があったのだそうだ。11万2千人もの人に影響が出たそうだ。中には大学の受験生もいたらしい。けれど、万が一の事態を想定したら命あってのものだねよねぇ。朝の短めの旅行をしてのんびりと社に着いた私には何も言えた義理ではないが。
さて、「遅くなりましたぁ」と、デスクについたとたんにトイメンに座るP氏に聞かれた。「山の手線は外回りが止まると、内回りも動かないんですか?」。オンヤ??? 私が出勤時に乗車するのは内回り。今日、止まってますってさかんに言ってたのは外回り。私は内回りの電車が止まっているところを見たのかな…イイエ、改札で早々に振り替えのチケットをもらい回れ右をして都営浅草線へ。内回りのホームにすら行ってはいないのだった。京浜線の同じ方向から来るマサちゃんからは「逆方面じゃなくて良かったですね」なんてメールが来たし、やっぱり内回りは無事だったのでしょうか。
大きな声では聞けないけれど「JRの関係者さま、山の手線内回りは平常運転だったのでしょうか?」