エッ、もうこんな時間?! お風呂に入ろうと、時計に目をやって驚いた。なんと午前2時30分になっているではないの。今となっては昨日の晩、午後11時には(そろそろお風呂に入りましょう)と心積もりしていたのに…。

原因は“ぷよぷよ”だ。私のお腹のことではない。パソコンで見つけた、落ちてくる2色のボールを積み上げては消して行くゲームの名前だ。同じ色が4個繋がるとそのボールが「ぷよぉ」と言いながらパッと消える。いかにして画面の中にボールを残さずにおくかが重要なのだが、4個がなかなか繋がらずアタフタしていると、アッという間にボールが頂上まで高く積みあがり「ゲーム・オーバー!」。「トライ・アゲン?」すかさず機械音が聞いてくる。「もちろん」と、「トライ・アゲン?」の言葉が終わらないうちにplayボタンを押す。ボタンを押すのが「トライ・アゲン?」の“?”から“ン”になり“ア”になり、しまいには「ゲーム・オーバー!」の言葉も終わらないうちに「まだまだ辞められるか!!」と次のplayにトライする。そんなことを繰り返していたら丑の刻となっていたというわけだ。

目は疲れるし、肩は凝る。ヒジも痛むし、腰もはる。なのに始めたら最後、なかなか辞められない。これは一体なぜ? 自分に問うてみた。もちろん「ゲームにはまり易い怠惰な性格」というのが大きな原因だとは思うのだが、もう1ツ要因が浮かんできた。一人ぽっちの部屋での暖かい団欒への郷愁だ。(ウウ、涙)

姪達が幼い頃、ファミコンが大ブームだった。私が実家に帰る度に新しいゲームが増え、その都度“お手合わせ”をさせていただいた。最初はご存知「スーパーマリオ・ゲーム」。私がやると、いっつも同じ所でマリオが崖から落ちる。崖を跳び越えさせるためにボタンを押すたび、自分の体まで浮き沈みし姪達に笑われながら、その動作の真似をされたものだ。初めてステージ1を最期まで無事進み、マリオが旗を挙げるポールに飛びつき、花火が上がった時は嬉しかった。「やったね! チャーちゃん(私です)よく頑張ったネ」なんて、姪達に拍手までされた。一体どっちが大人だ?!

私が、やっとこ1面をクリアして喜んでいる頃、姪達の繰るマリオは地下にもぐって火の玉を避けたり、空を舞ってシーソーのような板に乗ったり、あるいは水底を泳いだり、そうそうカメを蹴飛ばしたりもしていたなぁ。1面から先に進まない私には、到底見ることのできない様々なキャラクターを次々出していく、小さな指の動きを不思議な生き物でも見る気分で横目で見ていたものだ。

マリオや弟のルイージ、キノコ王国のピーチ姫、今人気の‘ドコモだけ’に似たキノピオ…色々なキャラクターが揃ってのゴーカート・ゲーム、マリオ・カートもあった。二人の姪と、その親である豚弟と一緒に「スタート!!」。ところがなぜか私のカートはコースをそれるだけでなく、その場でグルグル回ったかと思うと、やおら逆方向に走り出したり、とにかくいっつもダントツのビリ。そんな時、豚弟は「グハハ」と笑っているだけだが、姪達は「大丈夫だよ、次はちゃんと走れるよ」と、伯母様を優しくフォローしてくれるのだった。最後には周回遅れの私のカートを見て、豚弟以上にお腹を抱えて笑っていたけどね。

婆バカが孫達のためにイトーヨーカドーで、並んで買ってやった“たまごっち”も、二人はそれぞれに育てていた。「1日だけ」という約束で貸してはくれたが、マットウに育てられない自分を恥じず“幼児虐待”をしかねない伯母に呆れ、たまごっちは全く成長しないままに、即取り上げられてしまったっけ。そう言えば、誕生日に二人が贈ってくれた、卵の中から芽が出て咲くはずの花も、卵のままで腐敗臭を撒き散らし出し、処分の憂き目となってしまったのだった。姪達よ、卵アレルギー(?)の伯母を許せ。

ところで、様々なテレビ・ゲームを体験させてもらって1番はまったのが“ぷよぷよ”だった。このゲームは2人で同時にそれぞれの面を始めることができる。そして上手にボールを消す都度、対戦相手の画面に石つぶてをお見舞いすることができるのだ。姪達、とくに姉の方は小学生だったのにやたらと強かった。何しろ機械に強いはずの豚弟をも負かすことが度々だったのだから。そんななので、拝み倒して私のレベルは1番下に、彼女のレベルは最高値に設定してもらうのだが、どうしても勝てない。毎度毎度の石つぶてにまるで自分がタンコブを作りながら、埋まっていくような錯覚を覚えたものだ。

そして現在、すっかり成長してしまった姪達は、この伯母さまが実家に帰っても以前のようにまとわりついてくることはない。まして一緒にテレビ・ゲームに興じるということはない。「また勝っちゃったぁ。チャーちゃん(私です)弱いなぁ」と、私を負かせてキャッ、キャッと笑うあの声も帰って来ないのね。なんてオセンチしていた時に、インターネットの中に見つけたのがこの“ぷよぷよ”ゲームだったというわけだ。実家でのファミコンは、自分でテレビにセットする方法も分からなかったし「目に悪いから、もう今日はおしまい」なんて義妹が言うのを、伯母様としては(まだイイジャン!)という思いを隠して、姪達の手前、素直に従わざるを得なかったりしたが、自分のパソコンで遊ぶ分には簡単に始めて、いつまでだってやっていられる。そんなわけで、今は帰らぬあの頃の団欒を懐かしみながら伯母さまは今夜も一人“ぷよぷよ”にはまっているのだった。それでもきっと、今対戦しても、やっぱり姪達に負けるんだろうなぁ。